神宮外苑再開発事業の環境アセス始まる
最高190メートルの超高層ビル
このたび、「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」に係わる環境影響評価調査計画書が三井不動産から東京都に提出され、東京都環境局がパブリックコメントを募集しております。
今回の計画は、西側はスタジアム通り、東側は絵画館正面の軟式野球場を取り囲む楕円の道路東側とイチョウ並木の東側までを範囲としており、対象地域の地権者(明治神宮、伊藤忠、三井不動産など)のうち三井不動産が地権者代表として計画をとりまとめています。
なお、今回の計画書の閲覧は、区役所など所定の場所で5月17日までで終了しています。事業者側はパブリックコメントのために必要と考えられる計画書のWEB公開を認めなかったため、150ページ以上の計画書は都内数カ所の縦覧場所で見るか、限られた部数の貸し出し用を利用するしかありませんでした。
そのため、計画の概要を以下に記します。パブリックコメントを出すために更に情報が必要な方は、当会までご一報ください。
再開発計画の概要
都市公園・風致地区に指定されている神宮外苑では、オリンピック終了後の2020年以降、大規模な再開発が行われます。
- 銀杏並木の東側の常緑樹、落葉樹が鬱蒼と茂っているエリアに2階建て、高さ15メートル(一般的には4〜5階建の高さ)の商業施設数棟が建設されます。かなりの伐採が必要になると考えられますが、事業者の環境調査計画書には伐採については触れられていません。
- 神宮球場とラグビー場を入れ替え、銀杏並木の西側、歩道に隣接して新しい野球場(最高高さ60メートル)が建設されます。この野球場には商業施設とホテルも併設します。
- 伊藤忠ビル(現在80メートル、都市公園指定外)は190メートルの超高層に建て替え。さらに複合棟として185メートル、70メートルのビルが新しく建設されます。
- ラグビー場は新国立競技場に最も近い場所に新たに建設されます。
- 並木の北西の端には、ホテル(高さ30メートル)が建設されます。
問題点
- 神宮外苑は国有地でしたが、明治天皇の功績を残す公園をつくる目的で明治神宮に市価の半額で払い下げられたとされています。そして現在も都市公園と風致地区に指定され、今や都心における大規模で貴重な緑とオープンスペースになっており、特に銀杏並木は東京を代表する並木道として多くの人に親しまれています。多くの人が従っているルールを、この再開発のために特別に緩和することが予想されますが、緩和はそのまま地価を大きくアップし、事業者に大きな収益をもたらす可能性があります。どのような理由で、このような緩和が認められ、公的な空間が激変するのか、ほとんどの国民は知らされていません。
- 銀杏並木と絵画館の限られた樹木だけは守られますが、その両側の歩道を境に環境は激変します。東側は商業施設6棟の建設のために大幅に緑がなくなります。この樹林は、もう少し奥にある観兵榎の樹林につながるもので、ヒートアイランドの抑制に寄与している大切な樹林です。
- 西側には野球場の建物がギリギリまで建設されます。現在の並木の景観は並木だけで成立するものではなく、周辺にあまり高い建物が無く、緑が多いから成立する景観です。また、大きく育った銀杏は、広く根を張ることで自分を支えていますが、これも建物ができることで大きな影響を受ける可能性があります。これらの理由から現在の再開発計画では、並木としての価値が永遠に損なわれることになるのではないかと危惧しています。
- 特に大きな開発に義務づけられる環境影響調査(環境アセス)が行われますが、事業者(三井不動産など)は環境影響調査計画書のWebによる公開を認めないため、多くの国民が十分な情報を得ることを妨げられています。長年市民に親しまれ、国から特別の条件で払い下げられた土地の再開発の環境アセスです。見たいと思う国民が見られるようにすることを求めます。
- 今回の計画では、絵画館と銀杏並木の西側一帯は、都市公園から削除される可能性があります。歴史ある都市公園を地権者の一存で削除していいものでしょうか。
意見書提出のため、環境評価調査計画書(取扱注意)をご覧になりたい方は、神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会にご一報ください。
info@2020-tokyo.sakura.ne.jp
意見書の提出は5月27日(消印有効)までです。
送付先は 〒163-8001新宿区西新宿二丁目8番1号 東京都庁第二本庁舎19階 東京都環境局総務部環境政策課
念のため以下のURLでご確認の上、都民以外の方もどしどし意見を書いてください。
▼東京都環境アセス意見募集
■資料
▼東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針(東京都都市整備部平成30年11月)
▼銀杏並木東側緑地の写真(2019年5月手わたす会撮影)
▼神宮外苑再開発事業資料(計画図入り、三井不動産が、地元住民説明会で配布)
▼東京2020大会後の神宮外苑地区まちづくり指針【概要版】(三井不動産が、地元住民説明会で配布)
▼都市計画の専門家によるこの再開発の分析